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著者の本音

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TOP > 山見博康氏のページ2

私の著作の原点はこれですね

  山崎:「だから嫌われる」を読んでいると山見さんはいろんな言葉を知っていて教養のある方だと思うのですがどのように勉強されているのでしょうか?

山見:「広報の達人になる法−戦略的PR活動のための88の鉄則−」(ダイヤモンド社)を書くときに名言を入れようと思い立って多くの本を読んだんです。100冊ぐらい読みましたが、その多くは文庫本の古典です。
そのときたくさん勉強する機会を得て古典というのは凄いと実感しました。500−600円の文庫本を買う投資で計り知れない恩恵が得られるものだと。そこで若い方に古典を紹介することによって哲学的な考え、使命感とか倫理観を学ぶきっかけにしていただきたかったのです。

山崎:特にお勧めの古典をご紹介していただけませんか?

山見:私がいつも持ち歩いている本があります。
ショーペンハウエルの「読書について」(岩波書店)という本です。
この本は、「思索について」、「著作と文体」そして「読書について」という3つの論文からなっていて、文章を書いたり、考えたりする上での私のバイブルです。これは著者の心得ですよ。本を書く人は誰でも一読をお勧めします。
いくつかのポイントを言うと
「文体は精神ももつ顔つきである。それは肉体に備わる顔つき以上に間違いようなない確かなものである」「自分で考えて獲得したものだけが自分のものであって、人から聞いたことは単なる付着物、借り着に過ぎない。聞いたことをいくら言っても自分の言葉ではない。」
もっと厳しい言葉では
「無いものをあるように見せようとして、見え透いた努力をするな、少ないものを多く見せてはいけない」「思想を文体によって美しく飾ろうとしてはならない。文体とは所詮思想の影絵に過ぎない」

私は、いつもこれを読んで反省し学んでいます。一番影響を受けていますね、著作でも思索においても・・・。ものを書く上でも話す時にも、自分なりに少しでも良い言葉を使おうとしています。一字一句に自分の魂を入れようとするのです。語尾もチェックし、「だ」にするのか「である」にするのか。同じ言葉が続かないように注意しているのです。「多量の思想を少量の言葉に収めよ」との訓えもあり、この本によって私の文章が変わりましたよ。さらに「自分の思想が真理を含んでいると確信しさえすれば感激の情が自然とわきあがる。すると明瞭な美しい表現、力強い表現に向けて粘り強く書かなければ承知できなくなる」と言う意味が判るようになりました。
プラトンでさえ『国家編』を7回も書き直したって言うんですよ。
画家が一筆一筆、吟味するように言葉の芸術でも吟味せよと書いてある。
そうしようとするだけでも少しでも良くなるわけですからね。著作の心得でこれ以上のものはないと思っています。
三島由紀夫や谷崎潤一郎の文書読本にも学ぶところが多いのですが、私にとってはやはりこれですね。

山崎:本の教えを実践されているわけですね。

山見:「断固たる調子、確固たる態度 明晰な表現」というわけで「思う、思います」というのは私の文には一切といっても良い位無いはずです。「〜であろう、〜でしょう」というのもできるだけ使わないようにしています。もちろん時々は、使います、効果を考えてね。
「〜だと思われる」とは書いたことがありません。貴方が思うのか僕が思うのか、はっきり書けとの訓えです。ということで断固たる調子で書くよう心がけているのです。全て断定調ですよ。

山崎:自分の考えを確立されているからそういう文章ができるわけですよね。

山見:できる限りそうありたいと努めているのです。そうじゃないと借り着になる。借り着だと「思われる」になりがちになるんですね。

山崎:逃げ道を用意している?

山見:逃げ道を用意しているのではなく、逃げていることになると思って警戒しているのです。もちろん、自分では信じていても逃げていることになる。効果的に使うのは良いけど多用しないように心しています。
そうすると文章が歯切れ良くなってきます。できるだけ短く切るようにしていますから。それが自分の顔つきのようになってくるのでしょう。 もともと自分自身が短絡的というか単純な性格だからそうなるのですよ。
「文体を持つということは原料の練り子であってどんなものにも現れてくる。」とも書いてあるのです。それが顔つきになると考えるとわかります。
絵画でもそうですね。作風とか・・・。作品を見たら誰のものかわかるのと同じです。

私の著作の原点はこの460円の“高価な古典”にあります。著作する人はこれを1度読んだ方がいいですよ。これからモノを書こうとしている人も、すでに書いている人にもお勧めします。
若い人にも難しいことはありませんが、最初は読めるところだけでいいのですよ。段々わかってくる。わかりづらいところは飛ばしていっても、どこかでこれはいい言葉だなというところにぶつかる。そうしているうちに、また別なところが良くなってくる。次にまた読んでみようかなとパラパラと読む、そういう読み方をしてみてもいいんですよ。これを最初から全部理解して読もうとするから難しくなるのです。

信じていることを書く

山崎:本を書くときに意識されていること、コツを教えてください。

山見:私は最初いっぱい書くようにしています。それを収束していくうちに段々凝縮されよりよい文章になっていく、これが著作のコツだと思います。削減、削減していくうちに良いものができるのです。
だから思ったことや関係ありそうなことをたくさん書くんですよ。
例えば1,800字の原稿なら3,000字ぐらいは書くのです。それを1,800字に削減するうちに良いアイデアが出てくることも多いのです。文言を選んだり、言葉遣いを変えたり、順序を入れ替えたり、そういう作業をするうちに収れんされて良い文章ができるものです。著名な作家も同じのようです。例えば森鴎外の文章の心得にも「文章は明晰・明晰・明晰に。文章は短く」とあり、削減することは良いことなんですね。

山崎:何度も何度も読みなおして凝縮されるわけですね。

山見:凝縮して、凝縮して。コラムを書くのも凝縮・削減の訓練と言ってもいいのですよ。800字コラムでも、やっと800字では中身が薄くなりがちです。
大き目にふくらまして凝縮する時にどれを残すか、二つの意味をひとつにするのかも考える。そういうときに知恵が出る。いい言葉を思いついたりする。
小さいものを膨らませるというのは内容が空虚なものになり、それでは書く価値がなくなってしまうのですよ。
私も本が売れると嬉しいですよ、でも迎合しては書かない、信じていることを書くように肝に銘じています。
売れても売れなくてもいいんです、そこは。

山崎:売れるものより良いものを作りたいという山見さんの想いですよね。

山見:そうですね。

山崎:他には、どんな心意気で本を書かれていますか。

山見:わたしは知っていることをすべて開陳しようとしています。隠さないで。
当然ですが、自分ひとりの力で、ここまできたわけではない。先人や周りの方から受け継いだ知識や経験によって今があるのです。
「山見さん、こんなに書いたらセミナーで話すことないじゃないですか、コンサルティングのノウハウも詳しく書いてあり、真似されますよ。」って言われることもあります。まず、私のスタンスとしては、「どうぞ拙著で学んで真似してください」ということです。多くの方に広報力をつけていただきたいからです。ただ、一般的に言えば、著作やセミナーで多くのノウハウを学んでも、その通り真似できるものではありません。自分で咀嚼して本当に自分のものにしたものが身につくのです。逆に言うと、そのくらいのことで真似されるようじゃ真のノウハウとは言えないということでしょう。元々ないのと一緒ですよ。
たとえばイチローがですよ、「打撃の真髄」をいくら話しても、書いても、真似できるものではありません。そんな簡単にものまねはできないでしょう。

山崎:バッティングフォームは公開しているわけですからね。

山見:そうそう、皆わかっているけどできないものです。どんなにコーチしたってそうですよ。そこでビクビクするようじゃ、元々力がない、オリジナリティが無いんですよ。
だから私の場合は私のものでよろしければぜひご利用ください。本来私のものじゃなく受け継いだものだから何でもお見せし、何なりと引き渡しますよという気持ちなのです。


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