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「人」であって「物」ではない
山崎:何か「超求人成功法」に関して面白いエピソードはありましたか?岡野:もともと通販のことを求人に応用しましたよね。今度は逆応用というかですね、求人から通販のほうに気づかされることが多くなりました。私たち通販では多くのお客さんに支えていただいており、ファンになってくださるお客さんっていらっしゃるんですよね。ですから絶対に「客」と呼び捨てするような表現はしませんし、お客さんを大事にするということをずっとやってきました。この「人を大事にする」と言う発想が求人に大いに役立ったと思うんですね。
応募者の方に対しても敬語で紳士的に接していくということもそうなんです。「人を大事にする」ことをずっとやっていくと、求人というのは人の人生がかかっている。転職、就職される方にとっても会社にとっても、ひとつの変化、インパクトがあるわけですから大事なんです。だから慎重になって当然なんです。そこから、より人の気持ちを見るようになり、いろんな人の立場で考えるようになりました。求人というものをやったおかげで今度は通販のほうでもよりお客様の気持ちがわかるような気がしています。
あくまでも「気がする」という表現にとどめたいのは、完璧に私は人の心がわかりますなんて絶対思っていないんですよ。逆にわからないからこそ慎重に紙に書いて、それこそ幽体離脱して相手の中に入るぐらいのつもりになって考える癖が付いているんですね。 余談になるかもしれませんが最初にこのことを感じたのは、女性向けのダイエット商品を販売する時に自分なりに一生懸命考えてキャッチコピーを作ったんですね。それを女性スタッフに見せたら、けちょんけちょんに言われたんですよ。そこで思ったのは、「男性の発想を女性が見ると距離があるんだ」と。
そこで気づいたんですね、「あっ、そうか!わかったつもりになるのが一番怖いな」。
自分は男性だから女性の気持ちは絶対わからない。だからこそ一生懸命考えよう。そのうちに周りの人からは「岡野さんは人の気持ち、お客さんや社員の気持ちが良くわかるよね」と評価をされるようになりました。でも、そのような評価を受ける度に自分では、兜の緒を締めるようにしています。「実は、わかっていないから慎重にやる。だから近づいていけるんだ」という意識ですよね、そういう意識を持つようにしています。
まとめると結局求人を通して今度はより一層人の気持ちがわかる。そこが通販にも通じるということです。表面的には通販はモノ、求人は会社を扱うように見えますが実は、どちらも扱うものは「人」だったと。扱うものという表現自体は、適切ではないかもしれませんが、人が買うかどうか、人がエントリーするかどうかで判断するわけですから、私達が対象として接するのは「人」であって「物」ではないということです。
社長は教育者
山崎:今、ちょうど人と会社という話が出ましたが、この本のエピローグに「会社とそこで人生の大半を過ごす社員の関係がよりよいものになるように努力し続けていくこと。そう、それが社長の仕事!」だと手書きのメッセージまで書いてありますが、 社長にとって必要な資質とか責任感とかは、どのように考えていますか。岡野:組織の大きさにもよりますが、まずは利益をしっかりと生み出していくことと思っています。会社全体としては、社長が一番責任を感じて利益を生み出さなくてはいけない。あと対人間という部分で言うとメッセージにも書きましたが、人の発展に直接寄与できるという仕事は一番尊いと思うんです。直接、教育事業を手がけていなくても通販でも、求人でも教育という要素は否めないと思うんです。
たとえば、物を販売することによって、その商品のよさや、なぜそのような商品が必要なのか、なぜ健康に成ったほうがいいのか、そういう思想も含めて伝えていきます。
求人でも「仕事ってこういうものですよね」という自分達の考え方を出すことによって一種の求職者への教育っていうとおこがましいですが、気づくきっかけにしていただきたいと思っているんです。
つまり私達の求人広告を読んで、「あっ、仕事ってこういうことだったんだ。」「こういう仕事もありなんだ」「自分のこういう面ってこういう風に活用してもらえるんだ」とか、いろんなきっかけを相手に情報伝達していくわけです。
何も自分達の会社に人を集める、お客さんを集めるという「自分達が何を得るか」ではなく、「人に何を与えるか」ってことですね、それがちゃんとわかって与え続けられるもしくはそういう発展できるステージを用意する「それが社長の仕事」だと思っています。社長は教育者だと思っているんですよね。
山崎:それをエキセントリックデザイン株式会社では、実践されでいるわけですね。
岡野:そうです。でも、まだまだだと思っています。いつも自分の会社に点数をつけると51点だと思っています。
山崎:51点?その点数の意味は?
岡野:イチロー(メジャーリーガー)は好きですがイチローの背番号では有りません(笑)。
やっぱり半分より少し上でしかない、但し、下でもない、そう簡単に満点を取れるものではないと自分への戒めでもあるんです。単に経営上の数字だけでなく、私達よりいい会社は、たくさんあるよと。51点ですから何かいいことがあれば52点ぐらいに成る時もあるかもしれませんが毎年1点ずつでも積み重ねて行きたと思います。
本当の姿を変えていかないといけない
山崎:求人のメッセージで求職者の方にもいろんなものを伝えるべきだとのお話がありましたが、いまだに最低限の条件のみの求人広告、反対に誇大広告に近いような求人広告も見受けられますが求人広告を出す側の責任、モラル、倫理観に関してどのように考えていらっしゃいますか岡野:嫌でも倫理観が必要になると思います。今は、インターネットの影響が大きく、人の口から発せられる情報は遮れなくなりましたよね。どこかで誰かが表現します。特にブログがありますから。
情報をコントロールするには限界がありますので、情報をコントロールしようと考えるのではなく情報の元になっている実態、本当の姿を変えていかないといけないと思うんです。ですから誇大広告的なことや反対に情報が少ないのは、問題だと思います。
誇大広告的なことは、良いところだけをもっと大きく見せようとしています。
また、情報が少ないということは遠慮ではなく真実、つまり有利なことも不利なことも隠していると思います。
具体的に言えば、どんな社員がいるのか、どういうお客さんがいるのか、どういう教育システムになっているのか、いろいろなことを伝えられるはずです。
どちらも真実を隠しているわけですから、今後はこのような企業は存在、存続し得ないようになってくると思いますね。
山崎:やはり求職する側もレベルが高くなっていくにつれて求人を出す側も高くなり、 お互いのレベルが高くなっていく。その中で企業側から見ると、いかにより良い人を採るかということを考えなくてはいけないわけですね。
岡野:そうですね、いかにより良い人を採るかというのは生命線だと言われていますし あとはある程度、社風に合えば育てられる企業が伸びると思います。
「良い場所を用意してあげますよ、守ってあげますよ」ではなく、「育てられる環境を用意してあげましょう」ということだと思います。
なんでもかんでも手取り足取りするのではなく、その人の中に眠っている力を出せる場所ときっかけを与えるとことだと思いますね。それが本当の意味でも良い会社かなと思っています。
山崎:ひと昔前の求人の話かも知れませんが、まずは、頭数だけ集め入社させ、入社させたら教育してなんとか使い物になるだろう。でも結局ほとんど使えないで、どんどん社員が辞めていくような会社もありましたが、そういうやり方は、受け入れられなくなってきたのでしょうか。
岡野:それも一つのビジネスモデルとしては「あり」かもしれません。
求職者にとっても人生ですからチャレンジして敗れるという経験も大事だと思うんですよ、「あぁ、向いていないなぁ」と自分を知る意味では。そういう機能を一部、果たしているような気はするんですよね。
ただ、昔は入り口の部分で甘くしておいても、とりあえず採用されたら3年は辞めないとか、「辞める=ダメなやつ」とレッテルを貼られるようなところがあったと思うんですよ。今はもうそうでなく、「会社辞めるの、じゃ次どこ行くの?」みたいな感覚でしかない。アメリカなんかは、能力が高い人はどこへ行っても採ってもらえる、「辞める=エリートの証」みたいな部分があるじゃないですか。それに近づいているとまでは思いませんが、辞めることに対する抵抗感は無くなっていて、ほぼゼロに近づいていると思うんです。
昔、学歴に中退と付いていると「こいつよっぽど悪いことしたかのか」と思われて 人に言いたくなかったのですが、逆に今は、「中退=勲章」みたいなところがあって価値観が変わってきています。ですから「入り口を甘くしておいて後で」というのは通用しないと思います。


